二酸化炭素回収・貯蔵における電動アクチュエータの重要性
理想的な社会では、再生可能なカーボンニュートラル(脱炭素型)資源をエネルギー源として使用しているでしょう。ナショナル・ジオグラフィックによると、我々のエネルギーの80%以上が化石燃料を原料としており、燃焼すると現在の気候危機をさらに悪化させるものですが、この問題の解決策となり得るのが(1)CCS(二酸化炭素回収・貯留)です。
CCSとは、煙道ガス管などの点源(point source)から二酸化炭素(CO2)を抽出し地中に貯留する技術を言い、環境目標を達成するための選択肢になるものです。このエネルギーは、従来の炭化水素や工業物質から生成されていますが、政府は炭素抽出を奨励しています。
今後30年の気候変動目標を達成するには、約7500の大規模炭素回収施設を配置する(2021年5月、IEA報告書、「2050年までに正味ゼロ」)必要があり、電動アクチュエータはこのエネルギー転換の必要不可欠な部分とされています。
(1)化石燃料－引用元(nationalgeographic.com)
二酸化炭素回収のニーズとソリューション
CCSは比較的新しい技術であるため、二酸化炭素回収産業のニーズは現在も模索中です。CCSの成長に伴うその基本ニーズを理解するための最も簡単な方法として、効率化、リスクの低減、最適化が挙げられます。
効率化
CCSの生産性において、効率は基本的に重要です。電動及び電油式アクチュエータ(オンオフ及び調整弁用)によって、二酸化炭素回収工業処理プラントのバルブ制御操作が簡素化されます。バルブの完全電動駆動により、人の介入が必要な圧縮空気計装システムが不要になったため、空圧アクチュエータによるバルブ駆動と比較して、設置時間が劇的に短縮されました。現場のニーズに容易に適応可能な低価格二酸化炭素回収プラントの設計を可能にするシンプルなシステムが必要とされています。
リスクの低減
IQインテリジェントレンジのような電動アクチュエータを取り付ける場合、プロジェクト現場ごとにエアコンプレッサ、タンク、乾燥機、配管、制御盤、潤滑装置のサイズを変更する必要がないため、時間と費用の大幅な削減が可能です。
電動バルブアクチュエータは、基本的に、空圧アクチュエータが現場ごとに仕様の変更を必要とする使用用途であっても、仕様を変更せずにより多くの顧客仕様を満たします。既存のブラウンフィールドは従来型仕様であるため、現場に二酸化炭素回収システムを追加する場合、独自の空圧式バルブアクチュエータが必要となることもあります。
最適化
電動バルブアクチュエータは、圧縮空気システムを必要としないため、省スペースです。ブラウンフィールドの現場で既に圧縮空気が入手可能な場合、現場に合わせて細かい設計や変更が必要となるため、CCUS（二酸化炭素回収、有効利用、貯留）を利用することは非現実的且つ多額の費用が必要となります。
電動アクチュエータは、計装空気システム（コンプレッサ、タンク、乾燥機のフィルター、環状主回路、現場制御盤など）を必要としないため、炭素集約度の削減に貢献しています。電動アクチュエータは空圧アクチュエータに比べて比較的消費電力が少ないため、多くの調整弁を保有する二酸化炭素回収プラントでは、電動弁に変更することにより、電力消費量を削減できるでしょう。
CCU産業におけるフロー制御
発電等の多くの産業では、CCS技術の導入が奨励されています。一部の新興技術は成熟に近づいており、商業水準まで規模を拡大できるかを検証するために、試験が行われています。多くの国家は、1トンあたりの二酸化炭素回収コストが経時的に減少する可能性が高いことを確信しています。
フロー制御は、CCSにおける重要プロセスの操作の中心を担っています。プラントが二酸化炭素を回収するのが燃焼前か燃焼後か、それを輸送して使用するのか、あるいは長期貯蔵するのか、を問わず、フロー制御ソリューションは、慎重に検討して選択するべきです。
ソリューションとしての電動アクチュエータの役割
インテリジェント電動アクチュエータは、二酸化炭素回収量の少ない現場や、陸上・海上輸送を問わず、CCS産業独自の問題に対する ソリューションを提供します。回収した二酸化炭素は産業拠点に輸送されて、その他の回収源から回収した二酸化炭素と混合され、使用場所や長期貯蔵場所に分配されます。 インテリジェント電動アクチュエータは回収場所から使用場所までの二酸化炭素の輸送を支援します。正確で信頼性の高いアクチュエータは、パイプライン、輸送車両、船舶、短期貯蔵場所までの流量制御を調整します。
電動アクチュエータは生涯所有コストが低額であり、多くの製品が永久密封されているため、長寿命です。 試運転調整や保守は様々なユーザーインターフェースを利用して「非貫通（即ち、電気部カバーの取り外し不要）」で行うため、シールを取り外す必要はありません。O運転、調整、試験は中核拠点から行えるため、メンテナンスエンジニアが現場に出張する必要はありません。
電動アクチュエータにおける設計上の重要考慮事項の1つは、エネルギー使用量を最少化することであり、これによってOPEXを削減し、顧客のカーボンフットプリントを減少します。
結論
次世代のCCS市場は、低リスク低リターンのビジネスモデルを目標としているため、この目標を達成するための改善が必要です。
CCS技術の範囲が燃焼前または燃焼後のアプリケーションまで拡大するにつれて、規模の拡大が可能且つ経済的に魅力的なソリューションの提供がますます急がれるようになりました。二酸化炭素回収コストは大幅に変動することがあるため、二酸化炭素回収の継続的な成長には、インテリジェントフロー制御ソリューションを柔軟且つ確実に選択することが必要不可欠です。