中流の貯蔵アプリケーションにおけるフロー制御の役割

タンク&ターミナル, 2022年7月


中流の貯蔵アプリケーションにおけるフロー制御の役割

石油&ガスアプリケーションにおけるフロー制御の役割

フロー制御とは、液体やガスの流量を管理することです。アクチュエータは、プロセスの中枢でバルブを制御し、自動化を実現する重要機器の1つです。アクチュエータには、電源やお客様側の要件によりますが、電動式、空気式、油圧式、電油式の4種類があります。

石油&ガス産業の多種多様なアプリケーションで、電動アクチュエータは様々な役割を果たしています。上流アプリケーションでは、アクチュエータから、水、ガス、原油、コンデンセートの流量を制御することが可能です。一方、中流アプリケーションでは、遮断用アクチュエータは日常のフロー制御に、フェイルセーフアクチュエータは重要な安全用途に、そしてモジュレーティングアクチュエータはプロセスバルブの制御に使用されています。石油&ガス業界では、電動アクチュエータ、特に、インテリジェント電動アクチュエータ(データの取得が可能であるため)が益々選ばれるようになりました。電動式は、信頼性が高く、効率的、精密且つ使い方がシンプルです。防水仕様(タブルシールなど)の筐体によって、内部の部品を周囲環境から保護し、アクチュエータを耐久性のある堅牢なものにしています。石油&ガスアプリケーションで使用するアクチュエータは、生産及び処理工程で要求される高水準の安全性を達成するため、防爆認証を取得している必要があります。このようなアクチュエータは、大抵の場合、緊急遮断(ESD)及び遮断機能を提供することが可能です。タンクファームでは、殆どの場合、防爆認証と外界からの保護(ダブルシール等)を兼ね備えたアクチュエータが使用されています。フロー制御システムの中には、環境に悪影響を与えるものもありますが、電動アクチュエータはこのような影響を受けることはありません。従来は、ガスを動力源とする空気式アクチュエータが使用されていました。例えば、スプリングリターン及びダイヤフラム式空圧アクチュエータの場合、動力源のガス(殆どの場合、メタン)を大気中に排出します。気候危機への取り組みを手助けするため、事業者に益々多くの排出規制が課されるようになりましたが、電動アクチュエータの場合、上記のような環境汚染がないため、こうした排出規制の遵守に寄与します。

タンクファーム

タンクファームや貯蔵ターミナルは、石油&ガス産業の中流では基本的且つ必要不可欠なものです。タンクファームや貯蔵ターミナルは、天然ガス、原油、精製油、そして完成した石油製品の貯蔵に使用されるため、製油所に付属、若しくは近隣に建てられています。これら製品は、移送(例えば、パイプラインによる移送)までタンクに貯蔵された後、下流のフェーズに突入します。製品によりますが、これらはしばらく貯蔵することが可能であり、何がいつ起こるかは、国際的な需要と供給に左右されます。

このレベルの制御・管理は、石油&ガスの世界市場の一部であり、米国における戦略的石油備蓄のような石油&ガスの備蓄行為も、これに含まれることがあります。タンクや貯蔵施設は、地上・地下を問わず、建設されることがあります。フロー制御は、殆どの中流アプリケーションで、重要な役割を果たしています。 具体的には、受入れ、貯蔵、積み込み、ポンプステーション、計量スキッド、混合システム、輸送、安全・遮断オプション、液化(液化天然ガス:LNGの場合)など、ターミナルにおける個々のアプリケーションの様々な場面で重要な役割を果たしています。タンク貯蔵システムでは、タンクの流出防止、状態の監視、タンクゲージといった場面で、アクチュエータが使用されています。 遮断用アクチュエータはプラント中の日常的なフロー制御に、フェイルセーフアクチュエータは重要な安全用途に、モジュレーティングアクチュエータはプロセスアプリケーションに使用されています。 例えば、2019年には、モロッコのターミナルに、100台のインテリジェント電動アクチュエータIQ3が設置されました。同施設では、 532,900 m³の石油製品及び混合物質を貯蔵することが可能であり、アフリカ北西部での石油供給にとって、非常に重要な役割を担っています。IQ3アクチュエータは、タンクの入/出口側のゲート弁及びバタフライ弁を操作しています。

安全性

フロー制御ソリューションは、タンクファームやターミナル等の中流フェーズの安全対策において、重要な役割を果たしています。スムーズな作動のみならず、バンスフィールド油槽所の火災(2005年)のような事故を防止する上でも 、適切に手入れし、制御する必要があります。ここに、貯蔵タンクから石油があふれ出て、その蒸気雲が発火し、壊滅的な火災を引き起こした事例があります。このような類の事故を防止するためには、安全システムが必要不可欠です。タンクの故障や事故は、多大な危険と出費に繋がることがあります。可燃性物質を収容する施設は、常に、安全を第一に考えて稼働する必要があり、フロー制御システムはこのような場面で役立ちます。また、タンクの流出防止機能によって、タンクからの物質の流出(及び製品の損失)及びその後の安全上の問題を防止することが可能であるため、この点も考慮すべき重要ポイントとなります。アクチュエータは、入口及び出口側の遮断弁と、(場合によっては)調整弁を制御します。タンク流出防止システムのこれら全要素に、充填、排出、タンクブランケット、水位監視のための認証付き安全システムが必要です。 設備は、防爆、SIL2または3対応、SISシステムに好適であり、API/ANSI規格2350(最少人数のオペレータで作業する必要あり)に従って作動するものでなければなりません。

他に考慮すべき安全事項として、アクチュエータが提供するESDまたは遮断機能があります。ESDまたは遮断機能では、必要時(例えば、お客様側の仕様により異なりますが、ESD信号喪失時、電源喪失時、またはその両方)に、石油やガスの流れを止めることが可能です。フローが安全な動作状態で終了したことを確認することにより、安全上の問題と金銭的問題の両方を回避することが可能です。例えば、インド国内の複数のタンクファームでは、ロトルクの電油式アクチュエータ(スキルマチック)が遠隔操作式遮断弁(ROSOV)を制御しています。 同アクチュエータは、スプリングリターン機構によるフェイルセーフ制御動作を提供し、安全性の高い動作を実現します。電油式アクチュエータを選択することにより、油圧式のスピードと柔軟性、スプリングリターン式の信頼性、電動式の利便性と制御上のメリットを享受することができるため、安全機能の観点から、よく選択されています。また、スキルマチックアクチュエータは、上記以外に、ロッテルダムのタンクターミナルでも使用されています。Botlekタンクターミナルには34基の貯蔵タンクが存在し、合計200,000㎥の貯蔵容量を誇ります。このターミナルでもまた、50台を超えるスキルマチックアクチュエータがESD機能を提供しています。 同アクチュエータは、貯蔵タンク(及び船舶・トラック用ローディングベイの)入口及び出口側ポートを、予め設定しておいた安全位置に配置します。

アセットマネジメント

ダウンタイムにより、多額の費用や中断が発生することがあります。石油&ガスの生産においては、タンクファーム及びターミナルでは、重要フロー制御資産を頻繁に作動させて、生産性と収益を維持する必要があります。フロー制御を必要とする現場では、アクチュエータによる正確、安全、効率的な動作が必要です。例えば、タンクファームでフロー制御が中断すると、適切なマスバランスや要求される正確な混合を達成できなくなります。突然のダウンタイムにより、重要な運用目標から遠ざかることになります。これら重要資産を維持・保持することは、オペレータにとっての最優先事項です。今となっては、フロー制御技術の革新により、必須のアップタイムを伸ばし、資産の継続的な可用性に寄与することが可能となりました。この鍵となるのが、データを活用して業務の効率を向上することです。

ロトルクのインテリジェントアセットマネジメントシステムのようなアセットマネジメントシステムは、アクチュエータが最適な性能で、確実に連続作動し、現場の正確で、効率的且つ安全な稼働を実現するためにあります。このようなアセットマネジメントシステムは、石油&ガスの中流で要求される必須のアップタイムの実現に寄与します。.中断の期間を問わず、資産の実用性の欠如に起因する突然のダウンタイムにより、経済的損失を被ったり、評判の失墜に繋がる恐れがあります。 インテリジェントアセットマネジメントシステムのようなシステムである「産業用モノのインターネット(IIoT)」を部分的に活用して、インテリジェントアクチュエータ内のデータにアクセスし、そのデータを活かして性能やアップタイムを改善し、上記のような損害を防止することが可能です。インテリジェント電動アクチュエータはデータロガーを内蔵しており、このデータロガーから、バルブの作動回数、アラーム、バルブのトルクデータといった膨大なデータを取得することが可能です。トルク平均、デビエーション、ピークレベル、開閉トルクといったデータは特に貴重であり、アクチュエータの健康状態を把握する上で役立ちます。突然の変化が、潜在的な問題を示唆することもあります。  このようなデータを解析する総合的なアセットマネジメントシステムは、資産や現場の最適な稼働と、生産性の最大化、オペレーショナルリスクの低減に役立ちます。手動でのデータ確認を必要としないシステムには、データアクセスす。の障壁はありません。それどころか、同システムは分かり易く、鮮明に表示します。

タンクファームにおける資産の可用性は、バッテリー技術を用いて管理することも可能です。このような現場では、これこそが、プロセスのアップタイムにとって重要であり、バッテリーによる駆動が、電源の問題の解決策となり得るでしょう。電源が遮断されるか、若しくは断続的になる恐れがある場合、バッテリーによりフロー制御を継続することができれば、稼働停止したり、生産活動が中断することはないでしょう。 このようなソリューションは、電源断時でも継続的な稼動を可能にしたり、またはプロセスを安全に停止します。例えば、ロトルクのインテリジェント電動90°回転用アクチュエータ(IQT)の遮断電池オプションでは、バッテリーによりフェイルセーフ動作(安全位置、フェイルクローズ、フェイルオープン、現状位置)を実行することが可能です。プロセスは、安全上及び金銭的な問題が発生することなく、安全な動作状態で終了します。このような革新的なバッテリーの機能は、安全上のメリットは勿論、タンクファームのアップタイムの延長を支援します。

結論

石油&ガス産業においては、タンクファームや貯蔵ターミナルが非常に重要です。フロー制御は、流出防止、状態監視、タンクゲージといったタンクファームの複数のアプリケーションにおいて、重要な役割を果たしています。また、アクチュエータは、安全性を第一に考えなければならないような環境において、必要不可欠な安全機能を提供します。

 

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